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悪の教典ネタバレ感想・悪の教典で蓮実はなぜクラス全員を殺そうとしたのか

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貴志祐介の「悪の教典」を読みました。
2010年に出版された本で、宝島社の「このミステリーがすごい!2011」1位、週刊文春の「2010年ミステリーベスト10」1位、第1回山田風太郎賞受賞、早川書房の「ミステリが読みたい!2011年度版」2位と、さまざまな章を受賞しています。
2012年には映画化、漫画化もされました。

以下、物語の核心に迫るネタバレがありますのでご注意ください。

蓮実はなぜクラス全員を殺そうとしたのか

蓮実は、サイコパスです。
人を殺すことにためらいを覚えず、罪悪感もなく、都合の悪い人間を殺してしまいます。
蓮実は、過去にも犯罪を繰り返しており、そのことが、同僚(釣井)や担任するクラスの生徒(早水)に感づかれてしまいます。
さらに、そのことを隠すために同僚と生徒を殺すのですが、これをきっかけに、何人かの生徒に疑いを持たれてしまうことになってしまいます。
そのため、文化祭の日、感づいた生徒を自殺に装って殺そうと考えますが、そのことを別の生徒に知られてしまいます。
蓮実は、死体の処理に困り、「木の葉は森の中に隠せ」との発想から、クラス全員とその日学校に残っていた人間全てを殺し、その罪を別の同僚(久米)に擦り付けることを考えます。
蓮実は、久米の猟銃を使い、クラス全員を殺すことにしました。

なぜ生存者がいたのか

生き残った生徒は3人います。
一人は、蓮実に恋愛感情を抱き、体の関係を持っていた女子生徒(安原美彌)です。
安原は、自殺に見せかけて殺されそうになり、校舎の屋上から落とされますが、実は生きていました。
残りの二人は、すでに殺された生徒に自分が来ていた服を着せて、避難袋(上の階からの避難用のダストシュート)で地上に落とし、そこを蓮実に狙わせました。
蓮実は、思惑通り勘違いし、二人を殺したものと思い込みました。

蓮実は死刑になるのか

蓮実は、AEDに残されていた音声データが決定的な証拠となり、逮捕されます。
しかし、その際、蓮実は、「これは、全部、神の意思だったんだ。頭の中に響いてきた命令で、やったことなんだよ。四組の生徒は、一人残らず悪魔に取り憑かれていた。これは、みんなの魂を救うためだったんだ。」と発言します。
逮捕された瞬間から、蓮実は、自分が死刑になるかどうか、というゲームを始めていたのです。
生き残った二人生徒は、そのことに気づきました。
刑法では、心神耗弱者の行為は、刑を減刑する、心神喪失者の行為は、罰しないとされており、蓮実は、死刑を回避するため、自分が精神疾患を持っていることをアピールしたのです。
作中で述べられる識者の見解として、「正常な精神状態では、ここまで異常な范康は不可能であるというのが、弁護側の主張のひとつの柱になっており」とあり、蓮実の思惑は一定程度効を奏しているかのように思われます。
生き残った生徒二人は、ひとつの結論に達します。
「蓮実が死刑になるかどうかが、すべてだった。極刑が回避されれば、たとえ仮釈放されなくても、脱獄の可能性はある。あの悪魔なら何年でも何十年でも、じっと目を閉じて機械を待ち続けることだろう。刑務所ほど警戒が厳重でない精神病院に入れられた場合は、いつか必ず逃げ出すものと覚悟しておいた方がいいかもしれない。」
原作においては、その結論は、出ていません。
読者の解釈に委ねられています。

映画版の悪の教典


映画版がhuluで配信されていたので見てみました。
伊藤英明の蓮実がかっこいいですね。
原作を読んだばかりだったので、細かいところに設定が盛り込まれているなぁと理解できました。
原作を読んだことがない人には、説明が不足しているのかなという印象です。
原作と映画版では、違うところもたくさんありました。
蓮実が真田と堂島を嵌める場面がなく、体育の園田もカウンセラーの水落も出てきません。
校長が釣井が奥さんを殺したことを知っているというエピソードもなく、早水と養護教諭の関係も出てきません。

映画版で追加されていたのが、釣井が早水に蓮実のことを教えるシーンです。
釣井と早水は、蓮実の正体の核心に近づいています。
釣井は、自分がこれまでに調べた蓮実の経歴を早水に教えるのですが、その場面の釣井のかっこいいんですよ。
すらすらと話しながら黒板に板書するところ、「案外できるじゃん」と見直しました。
原作では、数学教師で、声が小さく、生徒は授業を聞かないという設定だったのですが、早水に説明しているときの釣井は、悪くない教え方だったと思います。

動画配信サービスhulu


・旅猿、渡部の歩き方を配信
・ナショナルジオグラフィックのリアルタイム配信
・映画名探偵コナンの過去作品を配信

サイコパスの特徴が当てはまる蓮実

サイコパスというのは、
良心が異常に欠如している
他者に冷淡で共感しない
慢性的に平然と嘘をつく
行動に対する責任が全く取れない
罪悪感が皆無
自尊心が過大で自己中心的
口が達者で表面は魅力的
という特徴を持っていますが、こういった項目はすべて蓮実に当てはまります。
普通じゃない人が登場する普通じゃない作品なので、見る人を選ぶと思います。
学校内で蓮実が猟銃で生徒を追い詰めていくシーンは、寄生獣に似た雰囲気で、恐ろしかったです。

印象に残った言葉

蓮実は、安原の遺書を作成するため、安原本人が書いた作文を取り出します。
作文から安原の書きそうな遺書や、筆跡を知るためです。
その際の言葉がこちら。

文は人なりという言葉があるとおり、文章を読めば、その人間の本質はほぼ理解できる。論理型か、感情型か。IQは高いか低いか。情緒が安定しているか攻撃的か。

自分の文章はどんな風に思われているのでしょうか。
見せたい自分になれるよう、言葉遣いに気をつけたいものです。

悪の教典

・2011年出版
・作者は貴志祐介
・サイコパスが出てくる
・映画より原作のほうが面白い
・手軽な文庫版も出ています